転職が怖い。
その感覚、すごくわかる。
「辞めてどうするんだ」「次が見つからなかったら」「今より悪くなったら取り返しがつかない」——頭の中をぐるぐるするあの感覚、私もずっと抱えていた。
転職が怖いのは、正常だ。変なことじゃない。
ただ、ひとつだけ聞かせてほしい。「このままでいいのか」という声を、今日も無視して眠れましたか?
25歳まで、兄のアパートに居候していた
地方の小さな町で育って、上京したはいいが、うまくいかなかった。25歳まで、兄のアパートに居候していた。
毎朝、兄が仕事へ出かける背中を見るたびに、胃が痛かった。「いつまでいるつもり」という言葉は一度も言われていない。でも、毎日その言葉を想像しながら生きていた。言われてもいないのに、勝手に消耗していた。
地元の友人からたまにLINEが来る。「結婚した」「家を買った」「子どもが生まれた」。返信するたびに、自分だけが取り残されている気がした。田舎には帰れない。でも東京でも何も掴めていない。どこにも自分の居場所がない感覚が、じわじわと広がっていた。
25歳という年齢が、重くなっていた。「もう若くない」という感覚と、「でも何も変わっていない」という焦りが、毎日一緒にいた。
転職したい、と思い始めたのはそのころだった。でも、動けなかった。
何が怖かったか、正直に言う
「失敗したらどうしよう」ではなかった。それよりもっと怖かったのは、動いた結果、今より悪くなることだった。今でもこんなに苦しいのに、さらに悪くなったら、もう立ち直れない気がしていた。
誰かに知られることも怖かった。兄に「転職活動してる」と言えば心配させる。「うまくいかなかった」とは絶対に言えない。だから動けないまま、また一日が終わる。そのくり返しだった。
「決めるためじゃなく、話すためだけ」に動いてみた
あるとき、こう思った。転職を決めるためじゃなく、ただ自分の気持ちを整理するためだけなら、動いてもいいかもしれない、と。
キャリアの相談サービスがあることは知っていた。でもずっと「転職を決めた人が使うもの」だと思っていた。違った。
相談してみて、最初に驚いたのは「転職しましょう」という言葉が一切出なかったことだった。
「今、何に疲れていますか」「どんな瞬間に限界を感じますか」「本当は何がしたいですか」
そういう問いを、順番に聞かれた。答えながら、泣きそうになった。誰にも話せなかったことを、はじめて言葉にした気がした。「自分でも気づいていなかったけど、ずっと認められたかったんだ」と思った。
変わる前の自分が、ダメだったわけじゃなかった
怖かったのは転職そのものじゃなかった、と今は思う。
「変わることで、今の自分が全否定される気がした」——それが一番怖かった。
居候していた自分。友人に取り残された気がしていた自分。誰にも言えなかった自分。そういう積み重なった「情けなさ」を抱えたまま、新しい場所に行くのが怖かった。
話しながら、気づいた。変わる前の自分がダメだったわけじゃない。ただ環境が合っていなかっただけだ、と。
その後、転職した。一番変わったのは、朝の感覚だった。目が覚めたとき、「また今日も」というため息が出なくなった。それだけで、十分だった。仕事への充実感が変わって、年収も大きく変わったのは、その後のことだ。今は部門の責任者として働いている。でも振り返ると、一番価値があったのはあの最初の一歩——「転職を決めるためじゃなく、話すためだけ」に動いた、あの日だったと思う。
「このままでいいのか」と感じているなら、その感覚はきっと本物だ。変わるための一歩は、決意じゃなくて「話すこと」から始まる。私がそうだったから。

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